静岡地方裁判所 昭和58年(わ)790号 判決 1984年3月22日
本店の所在地
静岡県浜名郡可美村若林二六二四番地の一
法人の名称
大富建設株式会社
代表者の住居
前同所
代表者の氏名
谷田康雄
本籍
兵庫県三原郡西淡町志知鈩三九七番地
住居
静岡県浜名郡可美村若林二六二四番地の一
代表取締役
谷田康雄
昭和二三年三月二四日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官岩村修二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人会社大富建設株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人谷田康雄を懲役一年及び罰金一、六〇〇万円に各処する。
被告人谷田康雄に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
被告人谷田康雄においてその罰金を完納することができないときは、金二万五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人会社大富建設株式会社(昭和五六年六月一日以前の商号丸雄建材株式会社)は、本店を浜松市菅原町一番六号コウノビル二階(昭和五八年九月六日肩書の本店所在地に移転)に置き、建物解体工事、埋立工事等を主たる目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人谷田康雄は、同会社の代表取締役として、その業務全般を統轄していたものであるが、被告人谷田は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空外注工賃等を帳簿に水増計上するなどし、これによって得た資金を仮名預金するなどの不正な方法により所得を秘匿した上
第一 昭和五四年一二月一一日から同五五年七月三一日までの事業年度における所得金額が九、三八七万九、〇六八円であり、これに対する法人税額は三、六九九万一、六〇〇円であるのに、同五五年九月三〇日浜松市元目町三七番地の一所在の所轄浜松税務署において、同税務署長に対し、所得金額は八五万〇、八〇七円であり、これに対する法人税額は二三万八、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の方法により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額三、六七五万三、六〇〇円を免れ
第二 同五五年八月一日から同五六年七月三一日までの事業年度における所得金額が一億四、〇二七万五、六八〇円であり、これに対する法人税額は五、七九五万五、五〇〇円であるのに、同五六年九月三〇日、前記浜松税務署において同税務署長に対し、所得金額は二八八万六、一六〇円であり、これに対する法人税額は八六万五、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の方法により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額五、七〇八万九、七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 大蔵事務官作成の告発書
一 大蔵事務官作成の各脱税額計算書
一 静岡地方法務局浜松支局登記官作成の各登記簿謄本
一 大蔵事務官作成の各証明書
一 大蔵事務官作成の各査察官調査書
一 上杉せつ子、由倉清、大城健一、瀬崎省吾、足立祐一、石原武司、大塚章宏、加茂智久、高林善市作成の各上申書
一 浜松市南農業協同組合三島支店瀬崎省吾作成の普通預金記入帳等の写し
一 富士銀行浜松支店牛島善一郎作成の定額預金利子所得税区分票等の写し
一 名古屋地方貯金局山田昇一作成の各定額郵便貯金払済貯金証書の写し
一 浜松市南農業協同組合三島支店大城健一作成の伝票綴、定期貯金証書等の写し
一 大蔵事務官作成の各臨検てん末書
一 浜松信用金庫伝馬町支店鈴木睦男作成の大富建設株式会社振出しの小切手の写し
一 日本旅行浜松営業所藤田正次作成の領収証(控)等の写し
一 検察事務官作成の捜査報告書
一 上杉せつ子、森達也、藤井洋子の検察官に対する各供述調書
一 高林善市の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書
一 谷田亀市の大蔵事務官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の各差押てん末書及び領置てん末書
一 谷田迪江の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書
一 押収してある元帳三綴(昭和五九年押第八号の一、二、一四)、同振替伝票三綴(同号の三ないし五)、同給与支払明細書等一綴(同号の六)、同請求支払補助簿一綴(同号の七)、同確定申告書コピー等一綴(同号の八)、同売上帳二綴(同号の九、一〇)、同人夫賃燃料費帳一綴(同号の一一)、同預金メモ一綴(同号の一二)、同黒表紙ノート一冊(同号の一三)、同精算表等一綴(同号の一五)、同売上分算メモ等一綴(同号の一六)、同伝票及び元帳一綴(同号の一七)、同大富建設株式会社ファイル一綴(同号の一八)
一 被告人谷田康雄の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書
一 被告人谷田康雄の当公判廷における供述
(確定裁判)
被告人谷田康雄は、昭和五七年六月一四日静岡地方裁判所浜松支部で廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反罪により懲役六月(三年間執行猶予)に処せられ、右裁判は同月二九日確定したものであって、この事実は検察事務官作成の前科調書及び判決謄本によって認める。
(法令の適用)
被告人らの判示第一の所為は昭和五六年法律第五四号による法人税法の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条、一六四条一項(被告人らの判示第一の所為は行為時においては、右改正前の法人税法一五九条、一六四条一項に裁判時においては右改正後の法人税法一五九条、一六四条にそれぞれ該当するが、右はいずれも犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による)に、判示第二の所為は法人税法一五九条、一六四条一項にそれぞれ該当するが、被告人会社大富建設株式会社については以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人谷田康雄については同法四五条前段及び後段によれば以上の各罪と前記確定裁判のあった廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反罪とは併合罪の関係にあるので、刑法五〇条によりまだ裁判を経ない判示各罪について更に処断することとし、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重し、罰金刑につき同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その所定刑期及び金額の範囲内で、被告人会社大富建設株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人谷田康雄を懲役一年及び罰金一、六〇〇万円に各処し、被告人谷田康雄に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間、右懲役刑の執行を猶予し、被告人谷田康雄において、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 榎本豊三郎)